井戸が眠る

なすくんが笑ってるから今日も五億の星が笑って見える

ずっとずっと


「絶対に忘れない! ずっとずっと、死ぬまで覚えてる!好きなものが変わったとしても、趣味が変わったとしても、きっと、死ぬまで覚えてるよ!
だってただのライブじゃなくて、私の人生にとっても、すごく大事な瞬間だった そう思えるから
きっとこの景色は、私が死ぬ日まで、ずっと、私の中に一緒にいるんだ!」


大好きな作品の中で、ファンが大好きなアイドルを見ながら言った台詞。
ファンの「一生好き」なんて嘘で、アイドルの「ずっとここにいる」も多分嘘になりやすい世界で、でも、それが答えだなってすとんと思った。
その言葉を全部噛み締めても足りないくらい、夢みたいな春だった。このほしに生まれてきたことを後悔しなくなるような春。会えた日から会えない日々まで、ずっと、ずっと、今も私の中に一緒にいる。


なすくんを好きになった日、ずっと好きでいたいなと思った。

気が早いので好きになった日、こんなにもこんなにも好きな気持ちが消えないといいな、この世界で息をしていてほしいな、ばいばいする日がこないと良いなって既に考えていた。

私にとってのなすくんはとてつもなく大きい存在だけれど、こんなにたくさんの感情や感動を貰っているけれど、私はただのアイドルなすゆうとくんのファンでしかないので、なすくんと私がお別れする道はたった二種類しかない。

私の好きが色褪せるか、なすくんが舞台から降りるか。

どっちが辛いかなんてわからなくて、でもどっちも恐ろしいことだった。恐ろしいからこそ、心を守るために何度も想像した。


お別れはじわじわとくる。
段々と、柔らかな水が染み出して薄くなっていくように、なすくんのことがそこまで好きじゃなくなっていく。嫌いとまではいかなくても、好きの海が凪いでいく。幕が開いた瞬間、流行りの音楽の歌詞を聴いた瞬間、月を見た瞬間、本能のように咄嗟に思い浮かぶ存在が変わる日。何事もなく世界は廻るのに、私の中のなすくんが遠くなる日。


それか、お別れはばっさりとくる。
ある日幕が開くとなすくんがいなくなっている。「あれ?」って思って、プロフィールを探すとページが消えている。
なんてまあこれは数年前の想像なので、今だったら突然動画や文章のお知らせがあがる形なんだろうけど。
とにかく、何事もなく世界は廻るのに、舞台にも雑誌にもテレビにもどこにもなすくんがいなくなる日。

考えても仕方ないそんなことを考えながら、それでもいつもなすくんを見ていた。ずっとずっと。
気が付けばなすくんのダンスは見惚れるほど柔らかくなって、元々ふと見れば優しげだった表情はいつ誰が見ても優しいものになって、必死に努力を傾けていた学業は受験生を応援する側のお仕事につながっていった。
好きになった日から今日まで、思っていたより何倍も何倍も、私はなすくんが好きだった。本当にずっとずっと、好きだったのだ。
それが凄く嬉しくて、びっくりする。


今年もね、すごくすごく大切な一年だったね。
初めての場所、生きてきた答え合わせみたいな祝祭の春。
屋上と暑さと光、慣れ親しんだ愛しさを年々重ねるわたしたちの大切な夏。
ペンライトを振って立っていた身体をおろして、心もゆるりと解けるような舞台期間。惹きつけられるように見つめた秋。
これからくる、大好きな光に溢れた冬。
テレビで、雑誌で、ドラマで、ラジオで、CMで、街頭ポスターで、たくさんたくさん出会えた思い出があって嬉しかった。お友だちとピザを食べるだけで嬉しくて、歩いてる時にふと現れる大きなポスターに胸がぎゅっとした。生活にどんどん美 少年が入ってくる。


思い出は確かにそこにあって、それでもやっぱり遠くなっていくから、あの特別な春が夢だったみたいに感じてしまうこともある。
遠くなる日々が溶けていつか消えて、「ずっと好き」が終わっちゃった後、わたしには何が残るのか、そんなしょうもないことを考えることもある。
でも、夢の名残はちゃんとずっと、私の中に残っている。一緒にいる。
光みたいな春を終えて、終わりを怖がってばかりいた私の中にすとんとちゃんと種が落ちた。ずっとずっと、大丈夫。


好きが光ることってあるだろうか。
幼い頃両親から受けた愛情が、制服を着て友だちと笑いながら分けあった時間が、恋人との間にあった空気が、思い返せば光っているように思えることもある。でも、物理的には光ることなど滅多にないし、それらは全部目に見えない。
でも、アイドルへの好きは光るのだ。それがすごいなって思う。私たちはペンライトで好きの海を作る。そして、アイドルも光る。スポットライトで、スパンコールで、物理的にキラキラと光っている。肉眼で証明できる星。

好きはちゃんと光るって、夢みたいだけど夢じゃないことを、なすくんがいつも教えてくれた。

夢のような世界は、あんまりにも好きだと「現実逃避」だなんて言われてしまうこともある世界で、でもそれは確かに現実としてそこにある。頑張って生きる毎日と、奇跡みたいな光の瞬間と、余韻を抱き締める帰り道と、また続く日常のつまらなさは全て地続きになって繋がっている。
これで明日も頑張ろうって思えた勇気や、もう何もかも大丈夫だと信じられた気持ちも、毎日を揉まれていく内に簡単に萎んでしまったりだってする。逆に、どんなに心がぺしゃんこになっても、あの時の光がちゃんと燃え滓のように胸に残っていて、ふとした邂逅で簡単に燃え広がって私をあたためたりする。そういう時、好きに守られてると思う。

 

気が付けばなすくんを好きになって、6年が経とうとしている。
気が付けば私の生活の中で私となすくんは当たり前のように共存していて、ステージはあんなに遠いのに、というか有難いことにどんどん遠くなっていくのに、ふと隣を見ると今も「なすくん」がそばにいて心を守り続けてくれているような気がする。(こわいね)

それくらい気が付けば私の心と私の好きはいっしょくたに混ざっていた。

ずっと好きって、きっとない。
ずっと6人で、ずっとそこにいてくれることも、もしかしたらないかもしれない。いて欲しいけど。

そう思うことが、大人になって時代が動くほどますます増えていく。“ずっと”って、きっとない。

私となすくんの、お別れの二択。

でもそのどちらが来ても、多分私はこれからも「なすくんを好きだった私」と生きている。それはなすくんと生きることと似ている。なすくんのことが大好きで、好きで好きで好きでたまらなくて、そうして色んなものと一緒に生きてきた人生の中で、今の私はそう思っている。

おしまいがどんなにあっさりと薄れたとしても、逆に過去を恨みたいくらいぐちゃぐちゃの終わりになったとしても、好きでいた中で見た景色の全部が、ちゃんと私の中にある。ずっとずっと。お別れしても、お別れにならない。

思い出が遠く小さくなってしまったように思えるのはただの距離の問題で、その存在が消えることはない。

 

「愛は花だ。運がなければすぐに枯れるし、腐ってなくなってしまう。だけど咲いていたことまで否定しなくたっていい。なくなったからって、偽物だったわけではない。昔、きれいな花が咲いていた。それでいい」


好きな作家の本の中で、拗れた父との過去を花に例えてそう思うシーンがある。
私となすくんの間にも、今とても、とても綺麗な花が咲いている。私のとびきりの宝物で、大事に大事に育てている。私の大切な花。
花が枯れても、踏み潰されても、自分で詰んでしまっても、大事にしすぎて腐った悪臭を放ったって、咲いていた事実は消えない。
もっと大人になった時、おばあちゃんになった時だって、ああ綺麗だったな、あの花はよかった、すごくすごくよかったって、ずっと思い続けたい。ずっとずっと。


叶わずに終わった恋にも意味はあるんだと、クローバー入りのサンドイッチを食べて泣いた男の子は言った。
子どもが大人になって離れる日が来ても、一緒に過ごした夏の日の黄金色の昼下がりが美しかったことは消えない。心を慣らした大好きな友だちがいなくなっても、ちゃんと麦畑は友だちの髪みたいに金色に輝き続ける。
お気付きのように私のブログはいつも私が人生で摂取してきた好きなものの引用でできている。そうやって、出会った人や出会ったものが全部溶け合って人生は続く。宇宙のスープ。

出会って、混ざって、繋がって、選んで、そしてなすくんを好きでいた。今も、好きでいる。

今はちゃんとそう思える。この先の未来にそれさえ信じられなくなる日がきたとしても、きっとその時はその時で新しいスープができあがっているはずなので良いのだ。悲しみだろうと悔しさだろうとそのスープには結局なすくんと過ごした時間や心が溶けている。この世に無駄な好きなんてひとつもない。

私の大事なものは全部まあるい円で繋がっていて、その一番向こう側に、なすくんがいる。ちゃんとずっと、繋がっている。遠くなっても、小さくなっても、ちゃんとまあるく繋がっている。繋がった円のその先で、なすくんがずっと笑って光ってくれていたらいいなと思う。

ずっとずっと。ってなんて無責任な言葉で、力のない約束みたいなんだろう。でも、口ずさんでみるとなんだか柔らかくて、お守りのように私の心があたたまる。ずっとずっと。なんだか魔法の言葉みたいに思えて、信じたいな、信じられるな、と思う。それはステージを見上げて祈る時の響きに似ている。ずっとずっと。

 

さっきも言った通りアイドルは、なすくんは、光の人だ。光れる人で、光らせられる人。なすくんがいつかその舞台を降りても、星を撒いた事実は消えない。地球を作ったのはなすくんだし、あの星を撒いたのもなすくんなんだって、ずっと覚えていて、自信を持って、胸を張って生きて欲しい。

そして私も星を見つけられた、なすくんを選べた人だってことを、ずっと胸を張って覚えていたいと思う。あの日撒かれた星と一緒に生きていく。ずっと私の中で生きて、共存して、ふと取り出して懐かしんで遊んだりする。

だから、ずっとずっと大丈夫。

また会えるから大丈夫だし、また会えなくても大丈夫。そんなことを思えてしまうくらい、私はやっぱり今年もなすくんが大事だった。頑張ってる世界一かっこいいひと。大事な、大事なかわいいひとだった。

 

来年も楽しみなことがたくさんある。まだまだ見たい世界もたくさんあるし、大好きななすくんと大好きな美 少年は私たちにまだまだ綺麗な景色を見せてくれると言った。あれ以上の景色なんてあるのか、って思っても思っても更新されるんだから、きっと来年もあれ以上の景色があるのだ。楽しみすぎますね!

とにかくとにかく元気でいてほしい。笑って、笑って、元気におなかいっぱい食べて、この世界を好きでいて欲しい。星を振りまいて全部を大丈夫にしちゃえば良い。

今年もアイドルを選んでくれてありがとう。見つけさせてくれてありがとう。

来年もたくさん夢をみようね。

 

またね!