井戸が眠る

なすくんが笑ってるから今日も五億の星が笑って見える

ジャニヲタに婚外恋愛に似たものを読んでほしい話


まじで長いから暇で仕方ない時にでも読んでください。

 

 

昔から私宮木あや子さんの書かれる女達がそりゃあもう大好きでして、その中でも「世の中のジャニヲタ、いや女の子でオタクをしている人みんなに読んでほしい...この感覚をわかって...」と言い続けていたのがこちらの一冊。


「婚外恋愛に似たもの」
f:id:hsnojsm:20170801160147j:plain


表紙からパンチがありますね。これで大抵の方は内容がなんとなく分かるでしょう。

この表紙めちゃくちゃ好きなんですけど、逆に「ああこれはよくある女オタクの痛さ怖さを描いてるやつ…うわしかも既婚者!?  重い愛を語る後味が悪くなる話だろうな...」って敬遠してしまう人も多いと思うんです。

しかし言いたい。それでも一度読んでみませんか!


宮木さんの文章力にかかると、顔文字や若者言葉、際どい現代社会、それら全てが下品ではなくなります。所謂ライトノベルな印象は全く受けません。もちろん私はラノベも好きですし読みにくい本ってわけではないんですけど!
前置きはここまでにしてバシバシおすすめしたいと思います。

 

 

ここに出てくる5人の女たち、まあ簡単に言ってしまえばオタク達、共通点は全員35歳既婚者、デビュー前のグループを追いかけていること。彼女達は容姿レベルも愛情の持ち方も、金銭感覚も何もかも違います。

金のあるオタク、ないオタク、リア恋、BL妄想、そこがまた「あるある〜!こんなオタク、いる〜!!」となります。

私的にアイドルだけじゃなくて俳優さんとかのオタクも分かるんじゃないかな?と思っています...

もちろんリアルだからって「実際こんなんじゃない」って思うところもあります、そう思う人もいます。でも、誰かに何かを注ぐ、夢見る、見つめる、そんな人たちの心を凄く上手に描いています。

 


アイドルたちが所属するのはディセンバーズ、そしてそのデビュー前のタレントは総称ノベンバーズと呼ばれています。彼女達が応援しているのはそんなノベンバーズの中のユニット「スノーホワイツ
もうお気付きでしょうがそう、まんまジャニーズ。この世界でのジャニヲタは「センバー」と呼ばれています。ジュニアであるノベンバーズを応援するヲタクは「ベンバー」。

スノーホワイツのメンバーのモデルは某えーびーしーのずぃ〜な方々のジュニア時代です。

該当担さんはもちろん、現在ジュニアを応援しているわたしも勝手に重ねて楽しむことが出来るほど、アイドル達の立ち位置やキャラも個性が出ています。

さらに!
登場する5人の女達、経済と容姿がそれぞれ五段階にそれぞれ違います。
なんでも一番を取ってきた女。
上から3番目の女。
いつだって真ん中の女。
下から3番目の女。
最下層の女。
これが、また、もうオタクとか関係なく女としてああ.....ああ〜〜〜ってなるんですよ。

 

宮木さんは女性描写が本当に上手い!それぞれの立場のコンプレックス、孤独、そしてそれだけじゃなく女として生きていく楽しさを描くのが上手いところも宮木さんの凄いところです。
上手く言えないのでそれぞれ見ていきたいと思います。


私が個人的に胸にささって「ああこの愛わかる、わかるよ.....」ってなった言葉たちも載せていきますね。

 


①上から3番目の女 桜井
何においても、上から3番目の人生を送ってきた。そこそこ美しい女の劣等感など、誰も共感してはくれい。というよりもそこそこ美しい女が劣等感を抱いているなど、誰も感じ取ってくれない。一番上に立つ女に対する愛情は崇拝か無償の愛、真ん中に位置する女に対する愛は深い情。三番目の女に対しての愛は、絞りカスみたいなもの。いっそのこと醜く生まれていれば良かった、なまじ美しい自分を知っているからこそ、期待を捨てきれない。三番目の女は常に何かが足りなくて、孤独。

そんな彼女が見つけた存在「みらきゅん」こと「神田みらい」くん。

 

「神田くんは、持てる愛のすべてを注ぐに相応しい、完璧な存在だった。

世界にこれほど美しい少年がいるのかと、彼に出会った夜に検索した動画を見ながら震えた。

真剣に踊る眉間の皺まで美しい。

どうして、出会ってしまったんだろう、あんな完璧な人に。そしてどうして私はこんなに完璧じゃないんだろう。」

 

美しいからこそ完璧に対してコンプレックスを持つ孤独な桜井にとって、完璧の象徴である神田みらいくん。


バースト(いわゆるジャニショ)に行くタクシーで先輩デビューグループINAZUMAの映像を見て、「私の心臓はきゅっと音を立てて縮まる。いつかスノーホワイツもこうしてテレビCMに出られるようになるだろうか」と思いを馳せる。ああこの気持ち...わかる...

彼女の夫がアイドルと浮気をしたり「男にとってのアイドルはオナニーでも女にとってはデトックスという最高の名言が飛び出したり見どころたくさんなのですが私が好きなところは、

コンプレックスへの虚しさや苦しさに耐えきれず家を飛び出して、遠征までする予定ではなかった先輩グループの大阪公演に行き、バックを踊る神田くんに会いに行った時のコンサートシーン。

(これ、ダフ屋でアリーナ席を買ったり、周りの子の団扇を見てよしこれでこのエリアに貰えるみらきゅんのファンサは私のものだ、良かったと思ったりするシーンもあってとても面白い)

 


「やがて場内が暗くなり、オープニング映像が流れ始める。大歓声の中、メインステージの天井付近からゴンドラに乗って降りてくるINAZUMAの五人を、色とりどりのスポットライトが照らす。そしてステージ上で彼らが降りてくるのを待っている、スノーホワイツの五人にはまだ光が当たっていない。
INAZUMAの五人が降り立ったあと、スノーホワイツの子たちが彼らの命綱を外す。INAZUMAのメンバーひとりひとりがピンスポットの中、ソロで踊り始める。各人にひとり、スノーホワイツの誰かがバックにつく。神田くんの立ち位置はいつもセンターではなく、左ら二番目だ。右から順繰りにスポットライトが当たっていく。

 

足の下から伝わる音の振動が脳天を震わす。手が冷たい。
ああ、もうすぐ。もうすぐみらきゅんに会える。


三人目のライトが消え、右手を空に突き上げて石像のようにじっと待機していた神田君の姿を白く眩いライトが照らした瞬間、嬉しすぎて、そして悲しすぎて、どっと涙が溢れた。」

分かりますかこれ.....分かりますよねこれ.....
始まる前のどきどき感が伝わってくる描写と、そしてあの自担を見た時の理由のつけられない涙。胸が苦しくて愛しくてたまらなくなる時のあの感情の波

 


②下から3番目の女 益子
私は正真正銘のバカだったが、小学校や中学校など、私が所属してきた社会にはいつも私を上回るバカが必ずふたりはいた。そして私は正真正銘のブスだが、同じ場所には私を上回るブスが必ずふたりはいた。
下を見ずに上を見ろ、向上心を持て、と偉い人は説いていたが、生きていく上で、上ばかり見ていたら死にたくな。私の下にも誰かがいるのだという安心感は、生きるための活力になるのだ。

ウッッ惨めさを露呈するようで目を背けたくなるけど、めちゃくちゃわかる..... 

そんな益子が応援しているのは「ハッチ」こと「八王子くん」

(パート先の主婦仲間とディセンバーズで誰が好き?という会話になったときにどうせ八王子と言っても誰も分からないから「INAZUMAのさくジョンくん」ととりあえず無難なデビュー組の名前を出すところもわかる〜〜!ってなります)

 

益子が八王子君を知ったのは、INAZUMAファンの友達に、チケットが余ったから行かない?とコンサートに連れられた先。

そこで益子はステージの隅に「こんな息子だったら良かったのに」とつねづね夢見ていた「息子」を見つける。


「ふくふくした柔らかそうな肌に包まれた、まだ未発達な「少年」の身体で、サラサラの髪を振り乱しながら全力の笑顔を張り付かせ踊っている男の子は、まさに夢のような「息子」だった。隅っこなので、スポットライトは当たらない。けれど私にはそこだけ輝いているように見えた。」


輝いて見えるわかる.....

グレた息子を持つ益子は、この友人から理想の息子八王子くんの話を聞く。まだデビューしておらずユニットもない彼。仕事は先輩のバックダンサー。

 

「涙が出そうになった。生まれてからまだ十四年しか経っていない男の子が、しゃかりきになって踊っているのを思い出すだけで、胸がギュッとなる。」

 

わかる〜〜!!!

 

友人から言われた言葉「あのねぇ、ベンバーは茨の道だよ」
いつ誰のバックに出るか分からない、音楽番組も一応録画しておかなければならない、義務でもなんでもないが、もう虜になってしまった益子はその言葉の意味を理解していく(わかる〜〜〜〜)

応援くらぶに入会し、携帯メールに配信される活動情報をチェックして、スノーホワイツという名前のついたユニットに八王子が所属しましたというメールを見た時は一歩階段を登った気持ちになる(わかる〜〜〜)
益子はセレブではないので、写真を買いながら、高くて「すみません、やっぱりこっちだけにしてください」と減らすところもリアル。

ここでも好きなのはコンサートシーン。

 

「出会った頃から彼は二十センチも背が伸びていた。同じスノーホワイツの神田君や大船君と並んで踊り始めると、八王子君が一番大きい。長すぎる手足を持て余しながらも、先輩たちについてゆこうと必死に踊る姿を見て、噴火のような勢いでいとしさが溢れる。


あれは私の夢の息子


絶対に手に入らないけれど、私が唯一、本気で欲しいと願った、いとしくてたまらない息子。」

 

噴火のようないとしさ.....すき.....
桜井に借りたファンサ団扇のおかげで三秒見つめてもらい「私はあの永遠のような三秒のために、これまで生きてきたのだ」「今、このまま幸せな気持ちのまま死んでしまえたら良い」と思いながら、グレた息子や慌ただしい家事に追われる日常へ帰る益子が、死のうかななんて思いながらも「大丈夫だ、まだ生きてゆける。あの永遠の三秒を思い出せば、いつまでかは判らないけれど、ある程度は耐えてゆける。」そう思うシーンに胸が抉られます。

 


③一番の女 隅谷
生まれついての才能だ。私は常に、美貌でも学力でも、所属する社会で一番上に立つ女だった。今でもそれは変わらない。

ただ1点を除いて。

隅谷が応援するのは「チカちゃん」こと「高柳主税」くん。

隅谷は簡単に言えばチカちゃんにリアコの女だ。最高


「結婚なんかしない。だって私、本当は結婚してるんだもの。精神と身体が一体であるのだとしたら、もう結婚して十一年なんだもの」

 

最高である。
金と権力を駆使してチカちゃんバックにつく海外ツアーも全て全通、さらに出待ちもしている。れつに並んでいるところを父親に見つかりお見合いを迫られ、親と決別。

 

「バカか雅!おまえもう三十だぞ、わかってるのか。」

「自覚してます、でもごめんなさいお父様、チカちゃん以外の男と結婚するくらいなら死んだ方がマシです」


そして隅谷はチカちゃんの切り抜きに囲まれた部屋で「幸せな結婚生活」を送っている。
何もかも一番の隅谷が唯一、一番になれなかったのが、この追っかけの頂点。隅谷より先にチカちゃんに目をつけた女が二人いるのだ。

 

「チカちゃんを一番好きなのは、この私なのに。いつもそう思いながら、薄い手紙をどちらかに渡す。彼女たちも既に、ファン歴の長い私の顔は憶えているはずだ。けれど絶対に私と交流は持たない。半ば意地なのだろうと思う。」


その代わり全てのコンサートに趣き(そのために仕事を独立させた)、時間と体力の許す限り入り待ち出待ち列に並び、公式写真やグッズは全て保存用と観賞用を購入する。

コンサートシーンで


「私は瞬足で鞄からうちわを取り出し、高く掲げる。そして叫ぶ。


「チッカちゃぁーーーん!!!!」


チカちゃん。

私はここにいるの、早く気付いて、私の天使。」

 

早く気付いて、私の天使。

最高である。

そう、私は隅谷のチカちゃんに対する気持ちが物凄く好きです。

 

「彼はある特定の分野の一番にはなれるかもしれないが、所謂「何もかも」という多岐に亘る分野においての総合一位にはなれない人だと早々に判明した。

それでも、隅谷にとっては彼は誰よりも愛しい一番の人だった。

何故自分にとっての一番なのか理由はわからないけれど、恋とか愛とかってたぶんそういう理由の付けられないものだ。

あれから十年以上前も経っているのに小学生のころからあまり変化の見られない無垢な言動や、太陽に向かって咲く花のような笑顔。

穢れないその身にたくさんの見知らぬ女の子たちの夢を背負いながらも彼は隅谷の知る限り、人前で一度も暗い顔を見せていない。

それって人としてすごいことだと思うので、もしかしてそれが一番たる所以かもしれない」

 

ああ〜〜〜わかる〜〜〜すき〜〜〜〜〜

実はチカちゃんと隅谷の出会いは結構運命的で、そのシーンのチカちゃんがもう可愛くて可愛くて...ジュニアのキラキラを煮詰めたような男の子がチカちゃん。

この後一波乱あった後の最後にチカちゃんと遭遇するシーン、物凄く胸に刺さって涙が出そうになるので必見です。


長くなりましたので続く!!